ドローンで夜間巡回|太陽光発電所・学校・研究所の盗難・侵入対策と、知っておきたい法律
更新日:3 日前
監修:岩岡真吾(株式会社TRIPLE7 代表取締役/元JAL国際線パイロット)
最終更新日:2026年9月28日
「夜の敷地を、毎晩だれが見ているのか。」
太陽光発電所の銅線ケーブル盗難が増えるなか、TRIPLE7には、学校や研究所からも「夜の見回りをドローンでできないか」というご相談が届くようになりました。敷地が広く、まわりを林やフェンスに囲まれ、夜は人がいない。こうした施設では、人が歩いて回るだけでは、どうしても見きれない場所と時間が残ります。
この記事では、施設ごとの悩み、2026年6月に全面施行された「金属盗対策法」、そしてドローンで夜に巡回するときに守るべき法律を整理しました。後半では、TRIPLE7が国内の太陽光発電所で行った実証で、実際に記録した数値もご紹介します。
この記事の要点
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数字で見る 夜の見回りとドローン
2万件超 金属盗 令和6年 | 約140億円 金属盗の被害総額 |
70m 人を確認した高度 | 10〜15分 巡回1回の時間 |
目次
なぜ今、「夜の見回り」をドローンで考えるのか
夜の見回りのご相談は、施設の種類がちがっても、悩みの根っこはよく似ています。
敷地が広く、人の足では回りきれない
固定カメラだけでは、死角が残る
夜に見回る人を確保し続けるのがむずかしい
暗い中を人が歩いて回ると、不審者や、地域によっては熊などの動物と出会うおそれがある
何かあったときに、最初の確認まで時間がかかる
ドローンは、決まった時間に自動で離陸し、上から広い範囲を見て、ポートに戻ってきます。人を危ない場所に向かわせる前に、まず上から確かめる。その役目を任せる形です。
ただし、ドローンの巡回は、人の見回りを完全に置きかえるものではありません。人や固定カメラと組み合わせて、すき間を埋めるためのものです。

太陽光発電所:銅線ケーブル盗難の現状
警察庁によると、金属盗の認知件数は次のように増えてきました。
令和2年:5,478件
令和3年:7,534件
令和4年:10,368件
令和5年:16,276件
令和6年:20,701件(被害総額 約140億円)
(出典:警察庁「金属盗対策に関する検討会」資料/警視庁・千葉県警の講演内容を伝えたSOLAR JOURNALの記事)
令和5年は、太陽光発電施設でのケーブル盗難が5,361件で、金属盗全体の32.9%でした。令和6年の上半期には、この割合が38.7%まで上がっています(警察庁)。
令和7年は、金属盗全体が15,712件、太陽光発電施設での被害が3,609件と、前の年より減りました。ただ、警視庁は、北関東で対策が進んだ結果、狙いが対策の手薄な地域へ移っていると説明しています。愛知県では871件から1,135件へ、静岡県では473件から1,018件へと増えました(SOLAR JOURNAL、2026年8月)。
令和5年から令和6年6月までに確認された犯行用具1,408件のうち、ボルトクリッパー・ケーブルカッターが688件(49%)を占めていました(警察庁)。短い時間で太いケーブルを切って持ち去る手口です。

盗まれると、発電所では何が困るのか
その系統の発電が止まり、直るまでの売電収入がなくなる
復旧工事の費用がかかる
追加の防犯カメラやフェンスなど、あとからの投資が必要になる
同じ場所が、くり返し狙われることがある
学校・研究所:ご相談で多い悩み
学校や研究所からのご相談は、盗難よりも「侵入」への心配が中心です。これまでにいただいたご相談では、次のような声がありました。
敷地はフェンスで囲まれているが、乗り越えられる高さしかない
境界の一部が林に面していて、人の巡回ルートからも外れている
人が見回るのは日中だけで、夜は無人になる
公道をはさんだ向こう側に、テニスコートなどの飛び地の施設がある
ドローンが異常を見つけたら、その場に駆けつけるのではなく、まず関係者にすぐ知らせたい
もう一つ、学校や研究所ならではの点があります。昼間は生徒や学生、職員、出入りの業者など、たくさんの人が敷地の中にいることです。夜の巡回用に置いたドローンを昼にも使うなら、人の上を飛ばないルートを、昼と夜で分けて考える必要があります。
また、研究所では、建物の中や実験設備が映らないように、撮影する範囲を決めておくことも大切です。

知っておきたい法律① 金属盗対策法(2026年6月 全面施行)
正式な名前は「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」です。2025年6月に成立し、段階的に施行されました。
2025年9月1日から:業務などの正当な理由なく、一定の長さや仕組みのあるケーブルカッター・ボルトクリッパーを隠して持ち歩くことが禁止されました。違反には罰則があります。
2026年6月1日から:銅などの金属くずを買い取る事業者(特定金属くず買受業)に、都道府県公安委員会への届出、売る人の本人確認、取引記録の保存(3年間)、盗品の疑いがあるときの警察への申告が義務になりました。
(出典:警察庁「金属盗対策」、e-Gov法令検索、SOLAR JOURNAL)
この法律は、盗んだ銅線を「売りにくく」し、道具を「持ち歩きにくく」するためのものです。一方で、敷地に入ってきた人に気づき、近づかせない役目は、法律が代わってくれるわけではありません。千葉県警も、防犯カメラ、センサーライト、警報装置、多言語の警告看板などを組み合わせることを勧めています(SOLAR JOURNAL、2026年8月)。
知っておきたい法律② ドローンで夜間巡回するときのルール
「ドローンを置いて、夜に自動で飛ばせばいい」と思われがちですが、実際にはいくつもの確認と手続きが必要です。
航空法:夜間飛行と目視外飛行には許可・承認が必要
夜間の飛行や、操縦する人が機体を直接見ない「目視外飛行」は、航空法で国土交通大臣の許可・承認が必要な飛行です。ドローンポート(DJI Dock 3など)から自動で飛ばし、離れた場所で映像を見ながら運航する形は、目視外飛行にあたります。
補助者を置かずに目視外飛行をする「レベル3.5飛行」という形もあります。この場合は、二等以上の無人航空機操縦者技能証明(目視外の限定解除つき)、第三者賠償責任保険への加入、機体のカメラで飛行経路の下に人がいないことを確かめる仕組みなどが求められます(国土交通省)。
人の上を飛ばないルートをつくる
関係のない人の上を飛ぶ飛行は、一等の技能証明や第一種の機体認証などが必要な、もっとも条件の厳しい飛行です。そのため、夜間巡回では、人の上を通らないルートを設計するのが基本です。
学校や研究所のように、昼は人の出入りが多い施設では、飛ぶ時間帯とルートを、人の動きに合わせて決めます。
他人の土地や道路の上を飛ぶとき
敷地のとなりの森や、公道をはさんだ飛び地へ向かうとき、「他人の土地の上を飛んでいいのか」というご質問をよくいただきます。
他人の土地の上:内閣官房の整理では、土地の所有権がおよぶのは「利益の存する限度」までとされ、他人の土地の上を飛ぶときに、いつも所有者の同意が必要なわけではないとされています。ただし、どこまでが「利益の存する限度」かは、建物の状況などによって事案ごとに判断されます。実際の運用では、となりの土地の所有者にあらかじめ説明しておくのが現実的です(内閣官房 小型無人機等対策推進室、令和3年6月)。
道路の上:道路の上を飛ぶだけなら、原則として道路使用許可はいりません。ただし、道路から離着陸する場合や、交通のさまたげになるおそれがある場合は、警察署長の許可が必要になります(警察庁、令和3年6月の通達)。
電波法:携帯電話の回線を使うときは「上空利用」の手続き
遠隔で運航するために、機体やポートで携帯電話の回線(LTEなど)を使う場合は、携帯電話会社の上空利用のプランなどに申し込む必要があります。ふつうのスマートフォンの契約のままでは、上空では使えません(総務省)。
重要施設の近くでは、飛べない範囲があります
国会議事堂や防衛関係の施設、原子力事業所など、国の重要施設の周辺は、小型無人機等飛行禁止法で飛行が禁止されています。2026年7月からは、禁止される範囲が300mから1,000mに広がりました(警察庁)。施設の場所によっては、この確認も必要です。
撮影とプライバシー、近隣への配慮
夜の巡回では、カメラで人を映すことがあります。学校なら生徒や学生、研究所なら研究の内容が映り込まないよう、撮影する範囲、映像を保存する期間、見られる人をあらかじめ決めておきます。総務省の「ドローンによる撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」も参考になります。
また、ドローンの音やライトは、施設のまわりに住む方に届くことがあります。飛ぶ時間やルートは、施設ごとに決める必要があります。
制度は変わり続けています
ドローンの制度は、ここ数年で何度も改正されています。申請の前には、その時点の最新の内容を確認してください。TRIPLE7の飛行の申請は、バウンダリ行政書士法人のダブルチェックを受けています。
実証でわかったこと(国内の太陽光発電所)
TRIPLE7は2025年7月、国内の特別高圧の太陽光発電所(廃ゴルフ場の跡地を使ったメガソーラー)で、DJI Dock 3とMatrice 4TDを使った夜間巡回の実証を行いました。過去に盗難被害があった発電所です。
ここからは、今回の実証で実際に記録した数値です。学校や研究所など、ほかの施設を考えるときの目安にもなります。
夜のサーマルカメラは、人をはっきり映す
夜は太陽光パネルが冷えるため、人の体温との差が大きくなります。高度70mからでも、パネルのかげにいる人をはっきり確認できました。

ライトだけで、ここまで照らせる
写真のまわりに街灯はありません。ドローンのライトだけで、電柱や草地、奥のフェンスまで照らせます。侵入した人にとっては、上から急に照らされることになります。

ドローンの音は、どこまで届くか
10m:78dB
30m:67dB
100m:60dB
音は、侵入した人に「見つかった」と気づかせる一方で、近隣への配慮も必要になります。地形によっては、300m離れた所でも音が反響して聞こえました(47dB)。
呼びかけは「サイレン → 音声」の順が効果的
スピーカーでは、まずサイレンを鳴らし、そのあと音声で呼びかける順番がいちばん伝わりました。同時に流すと、サイレンで音声が聞き取りにくくなります。音声は日本語・英語を含む4つの言語で用意しました。ドローンの音とライトに気づいた人は、身をかくす動きを見せました。近づかせない効果が期待できます。
敷地全部を回ると、47分を超える
敷地全体を1回で回るルートでは、47分を超えることがわかりました。そこで、侵入されやすい場所にしぼって10〜15分で回り、バッテリーは30分分を残すルートに組み直しています。また、高度15mより下では電波が途切れやすかったため、飛ぶ高さとルートの設計で避けました。
ドローンポートは「置けば終わり」ではありません。地形の理解、電波の調査、ルートの設計、何度もの試験飛行があって、はじめて毎晩の運用ができるようになります。


この実証の詳しい内容は、こちらの記事でご紹介しています。
夜は巡回、昼は点検。1つの仕組みで2つの役目
DJI Dock 3とMatrice 4TDの組み合わせは、夜の巡回だけでなく、昼の点検にも使えます。
夜:決まった時間に自動で離陸し、サーマルカメラで確認。必要に応じてライトで照らし、スピーカーで呼びかける。異常があれば関係者にすぐ知らせ、映像と飛行の記録を残してポートに戻る。
昼(太陽光発電所):パネル全体の可視画像と熱画像を撮り、発熱している場所(ホットスポット)や汚れを確認する。
昼(学校・研究所):屋上の防水シートや屋根、外周のフェンスなど、人が上りにくい場所の状態を上から確認する。
これまで別々だった「点検」と「夜の見回り」を、同じ飛行の仕組みでまかなえるのが、この形の良いところです。

飛べない日もあります
安全のために、次のような日は飛びません。
平均風速が5m/s以上のとき
1時間に2mm以上の雨のとき
衛星の電波が弱いとき、機体やポートにエラーがあるとき
飛べない日があることを前提に、固定カメラやセンサーライトとの組み合わせを考えるのがおすすめです。
導入の前に確認したいこと
ドローンポートを置く場所(5m×5m以上の平らな場所)
安定した電源(100V・1,000W程度)
インターネットの回線(携帯電話の回線が弱い場所では、衛星回線も検討できます)
侵入されやすい場所、過去に被害があった場所
人が出入りする時間帯(生徒・学生・職員・業者など)
となりの土地(森・道路・住宅)の持ち主と、近隣への音とライトの影響
撮影してよい範囲と、映像を見られる人
異常を見つけたとき、だれに、どう知らせるか
航空局への申請にかかる期間
ご発注から運用の開始までは、現地の調査、申請、設置、ルートづくりを含めて、2〜3か月ほどが目安です。
よくある質問
学校で、生徒がいる時間も飛ばせますか?
人の上を飛ばないルートを組めれば、昼の点検にも使えます。人の出入りが多い時間と場所をうかがったうえで、飛ぶ時間帯とルートを決めます。
となりの森や、道路の向こうの施設まで飛ばせますか?
他人の土地の上を飛ぶときに、いつも所有者の同意が必要なわけではありませんが、事案ごとの判断になります。道路の上を飛ぶだけなら、原則として道路使用許可はいりません。現地を確認したうえで、ルートと事前の説明の進め方をご提案します。
夜でも、人がいるかどうかわかりますか?
サーマルカメラを使います。実証では、夜の高度70mからでも人をはっきり確認できました。
異常を見つけたら、どうなりますか?
施設の決まりに合わせて、関係者にすぐ知らせる流れをつくります。映像と飛行の記録も残ります。
ドローンの音で、近所から苦情は出ませんか?
実証では、10mの距離で78dB、100mで60dBでした。飛ぶ時間・高さ・ルートを施設ごとに決め、近隣への影響をおさえます。
雨や風の強い夜も飛べますか?
平均風速5m/s以上、1時間に2mm以上の雨のときなどは、安全のために飛びません。固定カメラなどとの組み合わせをおすすめしています。
盗難の被害は補償してもらえますか?
ドローンの巡回は、盗難の被害そのものを補償するサービスではありません。運航中の事故に備えた賠償責任保険には加入しています。
ご相談・お問い合わせ
太陽光発電所、学校、研究所など、広い敷地の夜の見回りについて、ご相談をお受けしています。次のことがわかると、お話がスムーズです。
施設の種類と場所、おおよその広さ
心配していること(盗難・侵入・動物など)と、これまでの被害(あれば)
いまの見回りの方法(人・固定カメラなど)
人が出入りする時間帯
電源と回線の状況
土日を除き、2営業日以内にご返信します。
株式会社TRIPLE7(トリプルセブン)
DJIエンタープライズ製品代理店として、機体の選定・導入から運航まで、まとめてご相談いただけます。
参考にした資料
内閣官房 小型無人機等対策推進室「無人航空機の飛行と土地所有権の関係について」(令和3年6月28日)


