ドローン高圧洗浄の現場とは?TRIPLE7のトップパイロット・増田彪吾が語る施工と安全
更新日:8 時間前
監修:岩岡真吾(株式会社TRIPLE7 代表取締役/元JAL国際線パイロット)
最終更新日:2026年9月18日

「ドローンで高圧洗浄って、実際どうやっているんですか?」
セミナーや現場で、よくいただく質問です。
今回答えるのは、TRIPLE7のトップパイロット・増田彪吾。FPV・特殊空撮、アーティストの全国ツアーでのドローン演出、大型物流ドローンの実証実験など、多様な現場を経験し、NAPAドローンアカデミーではインストラクターの統括指導と技術監修も担っています。
その増田も、初めてのドローン高圧洗浄では「難しい!」と感じたといいます。
操縦できることと、きれいに洗えることは、どう違うのか。問い合わせから施工完了までの流れ、仕上がりへのこだわり、チームで安全を守る工夫、そして無理に作業を続けない判断まで、現場の言葉でお伝えします。
この記事の要点
|
目次
ドローン高圧洗浄とは?まずは仕組みを紹介
ドローン高圧洗浄は、ドローンに洗浄ノズルを搭載し、地上の高圧ポンプからホースで水を送り、高所の窓や外壁などを洗浄する方法です。
水源と高圧ポンプは地上に置き、ドローンがノズルとホースを持ち上げて作業します。水圧は地上のポンプ側で調整します。
足場・ゴンドラ・ロープ作業などで人が高所に上がって行う洗浄に対し、操縦者や地上スタッフが地上から作業できることが特徴です。
ただし、どの建物や汚れにも適しているわけではありません。飛行できる空間、洗浄する素材、汚れの状態、周囲の人や車両への影響などを確認して、施工方法を判断します。
1.問い合わせから施工完了まで、どのように進む?
最初に確認するのは「何のために洗うのか」
――お問い合わせを受けたら、まず何を確認しますか?
最初は、写真や図面をもとに打ち合わせをします。大切なのは、洗浄の目的です。
見た目をきれいにしたいのか、定期的なメンテナンスなのか、塗装前の下処理なのか。目的によって、確認することも、求められる仕上がりも変わります。
主に、次のようなことを伺います。
施工場所と、洗浄したい箇所・範囲
建物のおおよその高さと、対象の材質
汚れの種類と、蓄積している状態
周囲の建物、人や車両の通行状況
水がかかってはいけない設備や場所
現場での水道の使用可否
希望する施工時期や、施設利用上の条件
「この時間は会議があるので音を控えてほしい」
「この面は午前中に作業してほしい」
といったご事情もあります。洗浄する面だけでなく、施設がどう使われているかも伺います。
現地調査で、写真だけでは分からない条件を確認
――現地では、どこを見ていますか?
TRIPLE7では原則として現地調査を行います。
壁面と汚れの状態、飛行する場所の障害物、近隣の建物、水栓の場所や形状、機材の搬入経路、駐車場所などを確認します。
ドローンが飛べるかだけではありません。地上の機材をどこに置き、スタッフがどこで作業するかまで含めて考えます。ここで確認したことが、施工計画の材料になります。

汚れが落ちるか不明な場合は、テスト洗浄から
――本当に落ちるか、依頼する前に確認できますか?
「実際に落ちるところを見てから決めたい」という方には、デモ施工やテスト洗浄からご相談いただけます。
対象の素材や汚れを確認して、試す場所と範囲を決めます。落ち方だけでなく、仕上がりや素材への影響も確認するためです。
デモ施工であっても、安全確認を省くことはありません。現場に応じて必要な許可・承認や手続き、関係者との調整を行い、飛行前点検を実施してから作業します。
計画は、パイロットだけで決めない
――施工計画は、どのように立てますか?
工期内に作業を終えられるかと、安全に作業できるかの両方を考えます。
天気予報や風向き、道路・歩道の人通り、施設を利用する方の動きなどを確認し、作業する面の順番や時間帯を検討します。お客様のご要望も、安全上の条件と照らし合わせながら調整します。
危険箇所やスタッフの役割を、パイロット、補助者、安全管理者、現場責任者で共有します。操縦者だけが分かっている計画では、現場で機能しないからです。

施工前後の状態を記録して、仕上がりを確認
――施工当日は、どのような流れですか?
ご挨拶と準備のあと、作業前のブリーフィングを行います。その日の作業内容、注意する場所、役割分担などを確認する時間です。
飛行前点検と施工前の撮影を行い、洗浄を開始します。作業中はパイロットと地上スタッフが無線で連携します。
洗浄後はお客様と仕上がりを確認し、施工後の状態を撮影します。施工前後の写真を残し、報告書などで作業内容をお伝えします。
2.飛ばせるだけではきれいに洗えない
――空撮と高圧洗浄では、何が違いますか?
一番の違いは、飛ばす目的が「撮ること」から「汚れを落とすこと」に変わる点です。
正直に言うと、初めて洗浄で飛んだときの感想は「難しい!」でした。
汚れは落ちているんです。でも、狙ったように均一には落ちてくれない。壁面に、ミステリーサークルのような模様が残ってしまうこともありました。
洗浄では、水を当てた跡が、そのまま仕上がりになります。
落ちているか、落ちていないかを確かめながら、細かな操作を繰り返します。一つの汚れに数分向き合うこともあります。
操縦に集中するだけでは足りません。対象物との位置関係や、洗浄した面の状態、地上スタッフからの情報を確認しながら作業を進めます。

――水圧は、強いほどよいのでしょうか?
水圧だけでは決められません。汚れが落ちても、素材を傷めてしまっては意味がないからです。
TRIPLE7では、地上ポンプの設定圧力を5〜20MPaの範囲で調整し、水道水・純水・温水・洗剤を、対象の素材や汚れ、テスト洗浄の結果に合わせて使い分けています。
また、洗浄用の機材やホースを伴う飛行では、通常の空撮とは異なる条件を考える必要があります。機体だけを見るのではなく、地上の機材を含めた全体の状態を確認することが大切です。

3.「パイロットが一番喋る」チームで、安全を守る
――現場で、特に大切にしていることは何ですか?
自分の感覚と視覚だけに頼らないことです。
パイロットだけが状況を分かっている状態にせず、これから何をするか、どこに注意しているかを声に出して共有します。
補助者は「操縦中に話しかけない方がいいかな」と遠慮してしまうことがあります。だから、TRIPLE7ではパイロットが一番喋るチームづくりをしています。
気づいたことがあれば、立場に関係なく声を上げる。パイロットも、その声を受け止める。航空の安全管理で重視される「アサーション」を、現場のやり取りに取り入れています。

TRIPLE7では、元JAL国際線パイロットの岩岡真吾が安全管理計画書と運航マニュアルを監修しています。その考え方を、実際の作業でどう行動するかまで落とし込むことが大切だと思っています。

ノズルや接続部も、飛行前に確認する
現在のTRIPLE7では、抜け防止ロックピン付きの継手を使用し、飛行前に固定状態を確認する手順を定めています。
機体だけでなく、洗浄機材や接続部も含めて確認します。特定の部品を使えば、それだけで安全が確保されるわけではありません。機材の状態と、現場での確認を組み合わせて管理しています。

中断・中止の判断も、パイロットの仕事
――天候や現場の状況が変わったら、どうしますか?
現場では、想定外のことも起きます。
風や雨、視界、建物の周りの気流などを確認し、機材の使用条件と安全管理計画に照らして、続行・中断・中止を判断します。天気予報だけでなく、現場でどう変化しているかを見る必要があります。
無理に作業を続けて事故を起こすことが、一番意味がありません。
飛ばすことが目的ではなく、安全に施工を完了させることが目的です。必要であれば計画を組み直し、条件が整ってから再開します。再開が難しければ、延期も判断します。
こちらの記事も読まれています
4.落とせない汚れ、向いていない現場もあります
――高圧洗浄なら、どんな汚れでも落とせますか?
何でも落とせるわけではありません。
ドローン高圧洗浄は、ノズルから水を噴射して洗う方法です。ブラシでこすったり、研磨したりする作業とは異なります。
例えば、ガラスに強く固着した付着物や、洗浄だけでは回復できない素材・塗膜の変色や劣化は、別の処置が必要になる場合があります。
サビの除去や下地処理と、サビの周辺で浮いたり脆くなったりした劣化塗膜を取り除く作業も、分けて考える必要があります。TRIPLE7では、後者のような高所メンテナンスのご相談にも対応しています。
打ち合わせでは、汚れの種類だけでなく、何をどこまで改善したいのかを確認します。対応が難しいものは、その理由をお伝えしますし、判断がつかない場合にはテスト洗浄を検討します。
ドローンの特長を活かしやすい現場
――どのような建物に向いていますか?
建物の構造上、ロープ作業やゴンドラで近づきにくい場所では、ドローンを検討する価値があります。
足場を長期間設置しにくい施設や、限られた時間帯で作業したい現場なども、ご相談いただきたいケースです。ただし、実際に対応できるかは現地条件を確認して判断します。
人が高所に上がる作業を減らせる一方で、ドローンや部品の落下、水や除去物の飛散などに備えた管理は必要です。
無理に飛ばさず、別の方法を提案することも
飛行する空間が狭い、電線が多い、壁の近くまで樹木があるなど、作業に影響する障害物がある現場では、慎重な判断が必要です。
条件が合わない場所で無理に飛ばすことはしません。地上からの洗浄や、別の工法を検討します。
ドローンは手段であって、目的ではないからです。
5.経験を活かすのは操縦だけではない
――最後に、ドローン高圧洗浄で大切なことを教えてください。
操縦技術はもちろん必要です。ただ、それだけでは現場は進みません。
事前準備、補助者とのコミュニケーション、仕上がりの確認、状況が変わったときの判断。それらがそろって、初めて計画が機能します。
私は空撮や点検、イベント運用など、さまざまなドローンの現場を経験してきました。洗浄には洗浄ならではの難しさがありますが、これまでの現場で積み重ねてきた経験も、判断の土台になっています。

計画どおりに進めるために準備し、条件が変われば立ち止まる。チームで情報を共有しながら、安全と仕上がりの両方に向き合うことを大切にしています。
話を聞いた人|増田 彪吾(ますだ ひゅうご)![]() TRIPLE7 トップパイロット/NAPAドローンアカデミー 統括代表ボスインストラクター 8,000時間を超える飛行経験を持ち、FPV・特殊空撮、調査、有名アーティストの全国ツアーでのドローン演出など、多様な業務に携わる。北陸新幹線区間で行われた大型物流ドローンによる資機材搬送の実証実験でも操縦を担当。 現在はドローン高圧洗浄の現場に立ちながら、NAPAドローンアカデミーの技術監修とインストラクターの統括指導を担う。現場で培った経験を、施工と人材育成の両方に活かしている。 ※飛行経験8,000時間超は、2025年のNAPA公式紹介記事に掲載された数値です。高圧洗浄以外の飛行経験も含みます。 関連実績: |
ドローン高圧洗浄施工をご検討の方へ
「この汚れは落とせる?」「この建物でも作業できる?」「施設を利用しながら施工できる?」
まずは、建物の写真や図面をもとにお気軽にご相談いただけます。必要に応じて現地調査・テスト洗浄を行い、施工方法をご提案いたします。
ご相談時には、次の情報を分かる範囲でお知らせください。 こちらの情報があるとより詳細をお話しすることができます。
施工場所
洗浄対象と素材
建物のおおよその高さ、洗浄範囲・面積
汚れの種類
建物全体・洗浄箇所・周囲や足元が分かる写真
現場での水道の使用可否
ご希望の施工時期
株式会社TRIPLE7
電話:03-6826-0303


